棺桶島 モーリス・ルブラン/堀口大学
2006年3月8日 古代人の涙壺
私が生まれ育った田舎町は、戦中に堀口大学が何かの縁で疎開していたところで、母の勤め先の近くにその当時使用していた土地があった。それはもはや、片隅に堀口大学を記念するごく小さな石碑があるだけの、単なる薄だらけの空き地となり、しかし、彼の浪漫的な雰囲気から、「星の瞳のシルエット(柊あおい/りぼん/集英社)」における、星が降ってくるすすき野原ってこんなじゃなかろうか、とそれなりに乙女チックな想像を、妄想をしたこともあった。
訳者・堀口大学に対する個人的想念はさておき、わたしとモーリス・ルブランの出会いは「ルパン対ホームズ」であり、その中のホームズの描かれようがなんとも滑稽で(ホームズが日頃はやや見下しているスコットランドヤードのレストレード警部並みに力技で強引な捜査しかせず、捕まえたルパンにもまんまと逃げられているのだ!)、軽い憤りすら感じた。
しかしその頃から比較的律儀なわたしは、少なくとももう一冊ルブランの本を読まねば正確な評価ができない、と何故か決めていて、そうして読んだ813や水晶の栓は、荒唐無稽な面白さもあり、楽しませてもらった、という経緯がある。
「棺桶島」はやはり荒唐無稽で、ルパンはその孫(?)にまで続くと納得させられるほど、女に弱く、時にどこか間抜けである。そんな適当な作戦でよいのか?と思うところではしっかり敵に見つかり、状況を悪くし、しかしどこから、いつのまに、というような腹心の部下や発明品で状況を一気に改善してしまう。
昔、売れに売れたと言われるアレクサンドル・デュマも共通しているのだろうが、荒唐無稽な冒険、メロドラマ、サスペンス、は当時のフランスもそうだが、現在のハリウッド超大作にもなんら変わりはしない、そういうスタンダードな面白さなのだろう。
しかし、「棺桶」+「島」となると、「死人の箱には…」という海賊の歌とスティーブンソンの「宝島」を思い出してしまう。いつだってわたしはスタンダードな面白さをそれなりに愛していて、本当は昔から乙女チックな妄想よりも荒唐無稽な冒険に心惹かれていた。
…今となってはそのどちらも欠けているのだろうが。
それにしても、やはりルパン対ホームズの中のホームズ様はちょっとかっこ悪くて切ない。
訳者・堀口大学に対する個人的想念はさておき、わたしとモーリス・ルブランの出会いは「ルパン対ホームズ」であり、その中のホームズの描かれようがなんとも滑稽で(ホームズが日頃はやや見下しているスコットランドヤードのレストレード警部並みに力技で強引な捜査しかせず、捕まえたルパンにもまんまと逃げられているのだ!)、軽い憤りすら感じた。
しかしその頃から比較的律儀なわたしは、少なくとももう一冊ルブランの本を読まねば正確な評価ができない、と何故か決めていて、そうして読んだ813や水晶の栓は、荒唐無稽な面白さもあり、楽しませてもらった、という経緯がある。
「棺桶島」はやはり荒唐無稽で、ルパンはその孫(?)にまで続くと納得させられるほど、女に弱く、時にどこか間抜けである。そんな適当な作戦でよいのか?と思うところではしっかり敵に見つかり、状況を悪くし、しかしどこから、いつのまに、というような腹心の部下や発明品で状況を一気に改善してしまう。
昔、売れに売れたと言われるアレクサンドル・デュマも共通しているのだろうが、荒唐無稽な冒険、メロドラマ、サスペンス、は当時のフランスもそうだが、現在のハリウッド超大作にもなんら変わりはしない、そういうスタンダードな面白さなのだろう。
しかし、「棺桶」+「島」となると、「死人の箱には…」という海賊の歌とスティーブンソンの「宝島」を思い出してしまう。いつだってわたしはスタンダードな面白さをそれなりに愛していて、本当は昔から乙女チックな妄想よりも荒唐無稽な冒険に心惹かれていた。
…今となってはそのどちらも欠けているのだろうが。
それにしても、やはりルパン対ホームズの中のホームズ様はちょっとかっこ悪くて切ない。
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