「物語」において、わたしがなぜか苛々するポイントを敢えて規定するならば、それは「愚かなヒーロー/ヒロイン」に対してであろう。そしてそれが特に「ヒロイン」に対して向かいがちなのは、何のことは無い、わたしが「ヒロインではありえない女」だからである。それは明確だ。
 
 ヒーロー/ヒロインが持つ「愚かさ」とは?

 わたしは「禁忌に触れること」「逸脱すること」を恐れてきた。
 今も恐れている、変わらない。小心者でヘタレであるし、運を無駄遣いできるような強運の持ち主ではないからだ。

本書,「楽園」では常に主人公たちは「禁忌に触れる」のだ。
「性」というタブーを主人公たちは常に犯し、いつか破綻しそうな危うい日常を生きている。そしてそれが「楽園」なのだという。
 つまり「楽園」は、そういう危険を冒したさきにのみ存在する甘美なものの象徴ということなのかとも思う。

 「こっちへくるな」といわれて「え、なあに?」ととぼけてふらふら近づき、案の定敵に捕らわれ人質として主人公に迷惑をかけまくるヒロインのイメージは、ストーリーの常套句のようだ。

 そうして、そういえばはじめに楽園を追われた人も、「禁忌に触れた」のだったな、と思う。追われて初めて、「追われる恐怖」が立ち現れ、その恐怖があってはじめて「禁忌に触れること」=「甘美な楽園」という思想を生んでいるのかもしれない。
 でもやはりわたしは禁忌を犯せそうにないのである。

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