コリン・ウィルソンの代表作をひとつあげよといわれれば,数あれど,「賢者の石」と答えるべきところであろうが,荒俣氏の場合はこのレックス・ムンディの前に,「帝都物語」という大シリーズが立ちはだかっている。

 どうもこのオカルトだの古代遺跡だの,予言だのUFOだのいうと,昨今は「いかがわしい」目線を投げかけられている。
 荒俣氏はこのいかがわしいオカルトを操るようでいて,トリビアの泉ではほとんど語らない採点員としていつもタモリの対極点を勤めておられる。とてもかつての慶応ボーイとは思えぬ威風堂々たる姿勢である。

 どうやら,最近は「風水ブーム」のようだ。だが,荒俣氏が興味を注ぐ風水は本物の風水だ。
 以前アグネス・チャンがTVで「風水師の意見によっては夫婦の寝室も別にする年もあります」という,長年日本に住んでいる割にはやはりあまり上手ではない日本語でそうコメントしていたが,アグネスにそこまでさせるのが「本物の風水」ってモンである。

 おっと,話がついつい風水にそれてしまった。

 レックス・ムンディは「世界の王」の意である。それは善も悪も混沌のうちに含んだ概念だ。レンヌ・ル・シャトーの遺跡をめぐるテンプル騎士団・聖杯伝説・レックスムンディが,荒俣流にどのように味付けされているかが見所。
 文庫化を待っていたためか,どうも少し古い危機を扱っているようだが,本質はそこじゃない,考古学者に,歴史家に,そして真の好事家になりたかったころの気持ちをどこまでこの本を読むことで再燃できるか,それによると思うのだけれど。

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