この頭のかたちのとてもきれいなデビッド・スーシェは、ポワロにはまり役だったのだと思われる。

 ホームズと異なり、ポワロは恋多きひとだ。
 どうしても惹かれてしまう女賊を逃がしたこともあったっけ。

 思春期以前、そのメロドラマ性が嫌で、ほかにも薀蓄をたれたり変に潔癖症だったりと、そういう部分が、ホームズとともに形成された私にとっての「名探偵像」と大きく離脱していたように思えて、あまり好きじゃなかった。

 でも、もう少し時が経て、私に好みの奥行きが出てくる頃なると、彼の灰色の脳細胞を愛せるようになってくるわけだ。
 完璧さよりも、そのズレや駄目さを愛せるようなゆとりというか、鷹揚さというか、そのような「奥行き」。
 今では、「本当は結構出来る人なのに、ちょっとヘタレな3枚目」はむしろ愛すべきポイントとなっている。
 
 そしてポワロ最後の事件「カーテン」は、「ドルリーレーン最後の事件」と並んで、今読んでもやはり、胸が少し痛む。

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