鹿児島出身の年上だけど後輩のNは、入部まもなくのころ「薩摩隼人」への想念的質問として「やっぱり『おいドンは〜でゴワス』とかいっちゃうの?」と背の高い、ちょっときれいな女先輩に聞かれ、「いや、『薩摩のサムライはくっべたで言い訳もしもはん』です」と答え、飲み会会場全体の笑いを掻っ攫っていったものだった。その方言自体の信憑性も定かではないが。

 ともかく、アルバムタイトル『隼』に対して、収録曲に「8823」があって、あーこれがハヤブサってことね、と後から思った。はとやの「4126(よいふろ)」と同じ。
 スピッツは実は以前から好きなのだが、わたしのベスト3に、この『8823』はランクインする。
 このアルバムは、スピッツ好きの友人からもらった。「なんか、スピッツのイメージと違うわ。もらっとけ」
 
 サビは確かこんな感じ。
 誰よりも早く駆け抜け LOVEと絶望の果てにとどけ
 きみを自由にできるのは宇宙でただ一人だけ

 今は振り向かず8823 屑と呼ばれても笑う
 そしてきみを自由にできるのは宇宙でただひとりだけ


 この『きみを自由にできるのは』というのは、「きみをおもいどおりにしていいのは」という意味なのか、「きみを何らかの囚われから救いだせるのは」という意味なのか、今でもわからない。また、もしかしたらどちらの意味もあるかも、と思っている。

 このアルバムをくれた友人同様、スピッツのファンからは一部、「駄作」の烙印を押されているようだ。「スピッツらしくない」という批評ね、いいじゃないですか、きっとマサムネ君も「今は振り向かずわらって」いることと思う。

 迫り来る疾走感、それが好きなところ。屑と呼ばれても笑い飛ばして駆け抜けていくヘタレだけどまっすぐな少年らしさ、不器用さ、そうして終わりに向かっていくにしたがってバンド全体のテンションが上がってゆく感じがするのも、なんだか微笑ましくて、夜の川沿いの桜並木を意味もなく駆け出したくなる、そういう曲。

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