もはや時代はモダンではなくポストモダンであり、それすらもあるジャンルでは古さすら感じさせる状態であるが、「モダン」という言葉はすでにその内に「懐かし」という状態すら孕んでいるようである。その場合、「モダン」というよりは「モダーン」とかなんとかいう発音になるのかもしれないが。

 さて、前置きが長くなった感があるが、この本はタイトルからして、エログロナンセンスの流行った頃の、「探偵小説」というか、古くて胡散臭い新聞の猟奇特集の見出しのような、そのような風情があるではないか。
 
 さらにいえば、文庫版に献辞をよせて居るのが京極夏彦氏と高橋克彦氏なのだから、私が思わず手に取るのは当たり前と言えば当たり前と言えるだろう。

 明治の頃の血を吐く松、迷路での人間消失、消える幽霊電車、天に浮かぶ文字…それを昭和の初めの早稲田の不良書生「阿閉君」が取材して、下宿先のご隠居「玄翁先生」は安楽椅子探偵のごとく縁側で謎を解いていく。そして終末に向けて明かされていく意外な深層…。

 あくまで探偵小説なので、この程度のストーリーしか語れないのだが。

 ええと、探偵小説という響きには推理小説には無い、なんというか、猟奇さを孕んでいる気がする。それは江戸川乱歩先生によるものか。

 モダンの中に潜むレトロ、探偵が挑む猟奇(エログロ)、トリックをあばくロジック。
 そういった一見対極にあるようなものが絡みあるからこそ、そこに何とも言えぬ魅力が湧いてくるのだろう、と両価性の意義を考えた日。

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