それが救急医療の本質なのだ、という。

だから、夜、本来休みたい時間に交代で働く人たちがいる。

 それでも、少し患者がとぎれ、落ち着いてカルテ整理をして、ふと窓の外をみると、ゆるゆると明るくなっていく様をみると、疲労感と同時に充足感も訪れる。
 
 幸あれ、すべての人に、幸あれ

安っぽいヒューマニズムでなく、疲労した全身の筋肉がそう言うのだ。私にできること、一人にできること、その小ささはしっかり分かっている。今夜だってたいしたことをしたわけじゃあない。でも、少しだけ、歯車として動くことができた。それでいい。
 
部屋に戻ると、同僚が自分のデスクに突っ伏して寝ていた。先輩たちは食事しながらうとうとしている。この休息は長くない。また働くのだ。
 だが、今は、
わずかでもいい、すべての人に、安らぎがありますように

 柄にもなく、誰にともなく、祈りたくなるのだ

コメント