…映画監督ロバート・ロドリゲスは、まるでセルジオ・レオーネとサム・ペキンパとクエンティン・タンティーノをいっしょくたにしたような超ヴァイオレンス、皆殺し映画を作った。…

 この前作にあたる「エル・マリアッチ」とかいう映画で使ったキャラや設定をさらに派手にしたらしい。こちらはみていない。
 実際、タランティーノは彼自信の作品にちょい役で出るのと同じように、盟友ロドリゲスのために集金人の役でちょっと出演して下ネタ語を連呼していた。…いやなに、タランティーノ映画には欠かせないものでしょう、下ネタ連発は。

 昔、結構な腕前のギター引きだったエル・マリアッチ(バンデラス)はメキシコマフィアのブチョに恋人を殺され、左手をつぶされ、ギターを銃に持ち替えて彼への復讐を誓い、そのために血まみれに生きる。そしてブチョの牛耳る町で美しい女と出会い、新たな愛を得、ブチョへの復讐の気持ちをあらたにするのだが…

 このおもしろさは、こんな私の駄文じゃ伝えられないってのが真実。でもあえて語ろう。
 さて、この映画で「最も暑苦しい男、アントニオ・バンデラス」が愛用している銃はスターム・ルガーとか言ったと思うが、この銃はバンデラスが愛用するとは思えないほど、意外にスタイリッシュな銃だと思う…いや、主観的な感想だが。

 この際はっきり言おう、…好きなんです、この映画。たとえ最後につじつまが合わなくても、血まみれでも、面白い、この一言につきるのです。

 まず、バンデラスを助ける「兄弟より大事な友人」であるブシェミ。彼がいい。私はブシェミのファンである。若干、板尾イツジに似ている気がする。濃厚なキャラは彼だけではない。
 バンデラスと絡むヒロインはサルマ・ハエックなのだが、彼女はとにかく色っぽい。ラテン・ラテン・ラテン。この二人がギター抱えて「二人の即興演奏を…」などと言い出すのだが、その後ギターなんてそっちのけで何の演奏をしたかは、賢明な大人なら安易に想像がつくでしょう…そう、サービスシーンですよ。これもラテンな濃厚さです。いつでもどこでも世の中には男と女。この二人はそれを体当たりで表現してくれていますねえ。

 ここだけは注目なのが、バンデラスが以前ギター弾きだったときに一緒にバンドを組んでいた「カンパ」と「キーノ」である。バンデラスがある町を牛耳る悪党ブチョに最後の戦いを挑む際、
 「最強の男たちだ…」とかいって呼び寄せたのだが、その際バンデラスは彼らへの電話でこう付け加える「…ギターケースを忘れるな」

 バンデラス自体、ギターケースを持った大きなメキシコ人が酒場に現れてはギターケースの中に隠し持ったたくさんの重火器類で酒場のごろつきどもをはじめバーテンダーまで皆殺しにする、という噂の持ち主だったのだから、カンパとキーノが忘れちゃいけないギターケースの中身は想像がつくというものだが、どっこい、現れたカンパとキーノはその想像を見事に超えてきてくれる。

 ギターケース一つを持った男、そして二つのギターケースを持った男…どちらがカンパでどちらがキーノかはわからないが、彼らを迎えたバンデラスがにやりとしながら
「また3人一緒だな…レッツプレイ。」
と言うや否や、ギターケースを二つ持った男は、そのヘッド部分からマシンガンを連射し、一つだけ持った男はそこからランチャーを発射する。バンデラスの武器は両手の拳銃だけだ。

 しかし間もなく、マシンガンの男は弾切れを狙われて撃たれ、死亡。その後ランチャ−の男もバンデラスが「隠れろ!」と言っているのに全くその忠告を聞かず、撃たれて死亡。…おやすみ、最強の男たちよ。

こんなにつじつまの合わないことを、どう考えてもギャグにしか見えないことを、命がけで、友情や愛をかけて、真剣にやってしまっているのがとにかく、かっこいいのだ。この顧みない突き抜け方は、男のロマンではないかと思うのだがどうだろうか。
 突っ込みどころ満載のアホっぽさと、それをがむしゃらにやってしまう男たちの暑苦しさに、最大限の拍手と、エールと、爆笑を私は送りたくなる、…いつも。

 

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